Apple Intelligenceは、iPhoneやiPadなどのApple製品に搭載された新しいAI機能です。
2024年9月のiOS 18リリースと共に登場し、文章作成や画像生成、メール管理など多彩な機能を提供しています。当初は英語のみの対応でしたが、2025年4月のiOS 18.4アップデートで日本語にも対応し始めました。
この記事では、Apple Intelligenceの基本的な機能から日本語での使い方、さらには先行して使うための裏技まで詳しく解説します。プライバシーを重視したAppleならではのAI機能を、あなたの日常でどう活用できるのか見ていきましょう。
Apple Intelligenceの基本
Apple Intelligenceとは
Apple Intelligenceは、Appleが開発した人工知能システムで、iOS 18、iPadOS 18、macOS Sequoiaから搭載された新機能です。Siriの進化版というよりも、デバイス全体に統合されたAIアシスタントとして機能します。
特徴的なのは、多くの処理がデバイス内で完結する「オンデバイスAI」を基本としていること。クラウドに情報を送信する必要がある場合も、Private Cloud Computeという技術で個人情報を保護しながら処理を行います。
Googleの「Gemini」やMicrosoftの「Copilot」と同様に、テキスト生成や画像作成などができますが、Appleらしく洗練されたインターフェースとプライバシー保護に重点を置いています。
プライバシー重視のAIシステム
Apple Intelligenceの最大の特徴は、プライバシーを最優先にしている点です。多くのAIサービスがデータをクラウドに送信して処理するのに対し、Apple Intelligenceは可能な限りデバイス内で処理を行います。
デバイス内で処理できない複雑な要求に対しては、Private Cloud Computeという仕組みを使用。このシステムでは、Appleのサーバーに送信されるデータは暗号化され、処理後は速やかに削除されます。また、送信されるデータはAppleでさえ読み取ることができないよう設計されています。
さらに、ユーザーはいつでもApple Intelligenceの使用を一時停止したり、学習データをリセットしたりすることが可能です。AIに対する不安を持つ人にとって、こうしたプライバシー重視の姿勢は大きな安心材料となるでしょう。
対応デバイスと必要条件
Apple Intelligenceを利用するには、特定のデバイスとOSバージョンが必要です。現在対応しているデバイスは以下の通りです。
| デバイス | 対応モデル |
|---|---|
| iPhone | iPhone 15 Pro、iPhone 15 Pro Max、iPhone 16シリーズ全機種 |
| iPad | M1以降のチップ搭載モデル |
| Mac | Apple Silicon搭載モデル（M1以降） |
OSは、iPhoneとiPadではiOS/iPadOS 18.1以降、MacではmacOS Sequoia以降が必要です。また、デバイスの言語設定が対応言語（英語、日本語など）に設定されている必要があります。
メモリ要件も重要で、一部の高度な機能は8GB以上のRAMを搭載したデバイスでのみ利用可能です。例えば、Image Playgroundによる画像生成は、iPhone 15 Pro/Pro MaxやiPhone 16シリーズ、M1以降のiPadとMacでのみ使えます。
Apple Intelligenceでできること
文章作成と編集機能
Apple Intelligenceの文章関連機能は、日常的な文書作成をサポートします。メールやメッセージの返信案を提案するだけでなく、長文の要約や書き直しも可能です。
例えば、メールアプリで受信したビジネスメールを選択し、「要約して」と指示すれば、重要なポイントだけを抽出した要約を作成してくれます。また、自分が書いた文章を「もっと丁寧な表現に書き直して」と頼めば、同じ内容をより丁寧な言い回しに変換してくれます。
文体の変更も得意で、カジュアルな文章をビジネス向けに、あるいはその逆に変換することも可能です。長い会議の議事録を簡潔にまとめたり、アイデアをより構造化された形式に整理したりと、様々な場面で活用できます。
画像生成と編集
「Image Playground」という機能を使えば、テキストの説明から画像を生成できます。「富士山と桜」「未来的な東京の街並み」といった指示で、AIが画像を作成します。
生成された画像は保存して他のアプリで使用したり、メッセージで送信したりできます。また、「続きを生成」機能で、最初に作った画像のバリエーションを作ることも可能です。
写真アプリとの連携も強力で、既存の写真に対して「背景を変更して」「人物を追加して」といった編集指示も可能です。ただし、現時点では人物の顔を大きく変更するような操作はできないよう制限されています。
メールとメッセージの管理
Apple Intelligenceはメールやメッセージの管理を効率化します。受信トレイが大量のメールで溢れている時、「重要なメールだけ表示して」と指示すれば、AIが優先度の高いメールを抽出してくれます。
返信の作成も得意で、「この招待を丁寧に断る返信を書いて」といった指示に従って適切な文面を提案してくれます。また、複数のメールから情報を抽出して整理することも可能です。
メッセージアプリでは、会話の流れを理解した上で返信案を提案します。「今週の予定を確認する返信を書いて」と指示すれば、これまでのやり取りを踏まえた自然な返信文を作成してくれます。
通知の要約と整理
スマートフォンの通知が多すぎて重要な情報を見逃してしまう経験はありませんか？Apple Intelligenceの「通知要約」機能は、この問題を解決します。
この機能を有効にすると、特定の時間帯（例：仕事中や睡眠中）の通知をまとめて要約してくれます。「12件のTwitter通知」「3件の重要なメール」といった形で整理され、一目で状況を把握できます。
また、通知の優先度設定も可能で、特定の人からの連絡は常に即時通知、それ以外は定期的にまとめて表示するといった使い分けができます。集中したい時間帯に不要な通知に邪魔されることなく、必要な情報だけを確認できる便利な機能です。
日本語対応の最新情報
iOS 18.4で日本語対応開始
Apple Intelligenceは2025年4月のiOS 18.4アップデートで日本語対応が始まりました。当初は英語圏を中心に提供されていましたが、日本を含むアジア圏への展開が進められています。
日本語対応により、「文章を要約して」「この写真を和風テイストに変更して」といった日本語での指示が可能になりました。また、日本語特有の敬語表現や文化的背景を考慮した応答ができるよう調整されています。
ただし、英語版と比較するとまだ精度に差があり、特に専門用語や複雑な表現の理解には課題が残っています。Appleは継続的なアップデートで日本語対応の精度を向上させる方針を示しています。
対応言語と今後の展開
現在、Apple Intelligenceは以下の言語に対応しています。
| 対応状況 | 言語 |
|---|---|
| 完全対応 | 英語（米国、英国、オーストラリア、カナダ） |
| 部分対応 | 日本語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、中国語（簡体字） |
| 今後対応予定 | イタリア語、韓国語、ポルトガル語など |
日本語は「部分対応」の段階で、基本的な機能は使えるものの、一部の高度な機能（特定の画像生成や複雑な文脈理解）は英語ほどの精度が出ない場合があります。
Appleの発表によると、2025年末までに全ての主要機能を日本語で利用できるようになる予定です。また、方言や地域特有の表現への対応も徐々に強化されていくとのことです。
日本語での利用体験
実際に日本語でApple Intelligenceを使ってみると、基本的な機能は問題なく動作します。「今日の天気を教えて」「明日の予定を確認して」といった簡単な質問には正確に応答します。
文章作成機能も日本語で利用可能で、「お礼のメールを書いて」と指示すれば、自然な日本語の文面を提案してくれます。ただし、「もっと丁寧な表現に」と指示した場合、時々不自然な敬語表現になることもあります。
画像生成は日本語での指示に対応していますが、日本の文化的要素（「和風」「侘び寂び」など）の理解はまだ発展途上です。「富士山と桜の風景」のような具体的な指示の方が良い結果を得られます。
全体として、日常的な使用には十分な日本語対応が実現されていますが、専門的な内容や微妙なニュアンスを要する場面では、まだ英語に比べると精度に差があります。
Apple Intelligenceを使い始める方法
設定方法
Apple Intelligenceを使い始めるには、まずデバイスの設定から有効化する必要があります。以下の手順で設定しましょう。
- 「設定」アプリを開きます
- 「Apple Intelligence と Siri」をタップ
- 「Apple Intelligence」をオンにします
- 初回設定ウィザードに従って各機能の許可設定を行います
設定画面では、プライバシーに関するオプションも細かく調整できます。例えば、デバイス上のみで処理するか、クラウド処理も許可するかを選択できます。また、Apple Intelligenceが学習に使用するデータ（写真、メール、メモなど）の範囲も設定可能です。
設定完了後、初回使用時にはチュートリアルが表示され、基本的な使い方を学ぶことができます。
Siriからの起動方法
Apple IntelligenceはSiriと統合されているため、音声での操作が可能です。「Hey Siri」または電源ボタン長押しでSiriを起動し、続けて指示を出します。
例えば、「Hey Siri、今日の予定を要約して」と話しかけると、カレンダーの予定をAIが整理して読み上げてくれます。また、「Hey Siri、富士山の画像を作って」と指示すれば、Image Playgroundが起動して画像生成が始まります。
Siriを通じた操作は、運転中や料理中など手が離せない状況で特に便利です。また、「Hey Siri、Apple Intelligenceで…」と明示的に指定することで、従来のSiri機能ではなくAI機能を優先的に使用するよう指示することもできます。
画面操作での呼び出し方
音声操作以外にも、画面上の操作でApple Intelligenceを呼び出すことができます。
テキスト入力が可能なアプリ（メモ、メール、メッセージなど）では、テキスト選択後に表示されるメニューから「Apple Intelligence」を選択できます。例えば、メールの本文を選択して「要約」や「書き直し」などの操作が可能です。
また、コントロールセンターにApple Intelligenceのショートカットを追加することもできます。設定アプリの「コントロールセンター」から「コントロールを追加」を選び、「Apple Intelligence」を追加しましょう。これにより、画面上部（またはiPhoneの場合は下部）からスワイプするだけで素早くAI機能にアクセスできます。
さらに、アプリ内でも専用ボタンが追加されています。例えば、メモアプリでは新しい「AI」ボタンが表示され、タップするとApple Intelligenceの機能にアクセスできます。
主要アプリでの活用法
メールアプリでの使い方
メールアプリでApple Intelligenceを活用する方法はいくつかあります。
受信メールの処理では、メールを開いた状態で画面を長押しすると「要約」「重要ポイントを抽出」などのオプションが表示されます。長文のビジネスメールや複雑な内容のメールを素早く理解するのに役立ちます。
返信作成時には、返信ボタンを押した後に表示される「AI」アイコンをタップ。「丁寧に断る」「詳細を確認する」「予定を提案する」などの返信タイプを選択すると、状況に応じた返信文を自動生成してくれます。
また、新規メール作成時にも活用できます。件名を入力した後、本文エリアで「AI」ボタンをタップし、「〇〇について説明するメールを作成」などと指示すれば、適切な文面を提案してくれます。
メモアプリでの活用法
メモアプリでは、アイデアの整理や文章の編集にApple Intelligenceが役立ちます。
新しいメモを作成する際、画面下部の「AI」ボタンをタップして「アイデアを出して」と指示すれば、指定したテーマについてのアイデアリストを生成してくれます。例えば「週末の東京観光プラン」と入力すれば、時間帯ごとの観光スポット案を提案してくれます。
既存のメモを選択した状態で「整理して」と指示すれば、箇条書きや見出しを使って情報を構造化してくれます。散らかった会議メモや思いつきのアイデアを整理するのに便利です。
また、「この内容を表にまとめて」と指示すれば、テキスト情報を表形式に変換してくれます。データの比較や予定表の作成などに活用できるでしょう。
写真アプリでの機能
写真アプリでは、検索機能の強化と編集機能の拡張が特徴です。
検索バーに「去年の夏の海」「東京での食事」といった自然言語で検索できるようになりました。Apple Intelligenceが写真の内容を理解し、撮影場所や被写体、イベントなどの文脈を考慮して関連する写真を表示します。
写真の編集では、「背景を夕焼けに変更して」「笑顔を自然にして」といった指示が可能になりました。複雑なフォトショップの操作なしで、自然な仕上がりの編集ができます。
また、「Clean Up」機能を使えば、写真から不要な物体（電柱や通行人など）を自然に除去できます。写真を選択して編集モードに入り、「Clean Up」を選んで消したい部分をタップするだけです。
Safariでの活用テクニック
SafariブラウザでもApple Intelligenceが活躍します。
長文のウェブページを読む際、テキストを選択して「要約して」と指示すれば、重要なポイントだけを抽出した要約を作成してくれます。ニュース記事や研究論文などを素早く理解するのに役立ちます。
また、難しい用語や概念が出てきた場合、その部分を選択して「簡単に説明して」と指示すれば、わかりやすい言葉で解説してくれます。専門的な内容を理解する助けになります。
複数のタブで情報を調べている場合、「開いているタブの情報をまとめて」と指示すれば、各ページの重要情報を統合したレポートを作成してくれます。旅行計画や製品比較などの調査に便利です。
Image Playgroundで画像生成
基本的な使い方
Image Playgroundは、テキストから画像を生成するApple Intelligenceの機能です。使い方は非常にシンプルです。
- コントロールセンターまたはSiriから「Image Playground」を起動
- 「何を作りたいですか？」の欄に指示を入力
- 「生成」ボタンをタップ
- 数秒後に画像が生成されます
例えば「富士山と桜の風景、水彩画風」と入力すれば、指定した内容の画像が作成されます。生成された画像は最大4つのバリエーションが表示され、気に入ったものを選んで保存できます。
生成された画像はフォトライブラリに保存したり、メッセージやメールで共有したりできます。また、「再生成」ボタンを押せば、同じ指示で別のバリエーションを作成できます。
画像生成のコツ
より良い画像を生成するためのコツをいくつか紹介します。
詳細な指示を出すことが重要です。「猫」だけでなく「青い目の白い子猫、ふわふわの毛並み、窓辺で日向ぼっこしている様子、柔らかな朝の光」のように具体的に指示すると、イメージに近い画像が生成されやすくなります。
画風や雰囲気も指定すると効果的です。「水彩画風」「写実的」「アニメ風」「レトロ」などのスタイル指定を追加しましょう。また、「明るい」「暗い」「カラフル」「モノクロ」といった色調の指定も有効です。
複数の要素を組み合わせる場合は、「と」や「、」で区切って指示します。「東京タワーと満月」「雪山、松の木、小さな湖」のように関連する要素をまとめると自然な構図になりやすいです。
作例と応用テクニック
実際の作例とともに、応用テクニックを見ていきましょう。
「東京の街並み、未来的、夜景、ネオン」という指示では、サイバーパンク風の未来都市が生成されました。これに「ドローン」「空飛ぶ車」などの要素を追加すると、さらに未来感が増します。
「和風の庭園、紅葉、石灯籠、池」という指示では、日本庭園の美しい風景が生成されました。ここに「霧がかかっている」「夕暮れ時」などの条件を追加すると、より幻想的な雰囲気になります。
また、生成した画像をベースに「続きを生成」機能を使うと、元の画像のスタイルや要素を維持しながら新しいバリエーションを作れます。例えば、和風庭園の画像から「同じ庭園の冬の風景」と指示すれば、雪景色バージョンが生成されます。
先行して使うための裏技
RCバージョンのインストール方法
Apple Intelligenceの最新機能をいち早く試したい場合、開発者向けベータ版やパブリックベータ版を利用する方法があります。
開発者アカウントを持っている場合は、「設定」→「一般」→「ソフトウェアアップデート」→「ベータ版アップデート」から「Developer Beta」を選択します。開発者でない場合は、Appleのベータソフトウェアプログラムに登録し、同じ手順で「Public Beta」を選択します。
ベータ版は最新機能を先行して使える反面、不具合が含まれる可能性があります。重要なデータのバックアップを取った上で、サブ機として使用しているデバイスにインストールすることをお勧めします。
待機リストへの優先登録
Apple Intelligenceは段階的に展開されているため、対応デバイスを持っていても機能が有効になっていない場合があります。優先的に利用するための方法を紹介します。
Appleのウェブサイトから「Apple Intelligence待機リスト」に登録することで、順番が早まる可能性があります。また、Apple StoreのGeniusバーに相談すると、テスト用のプロファイルをインストールして先行利用できる場合もあります。
SNSやAppleコミュニティフォーラムでは、招待コードが配布されることもあります。定期的にチェックして、招待コードを入手できれば優先的に利用開始できます。
注意点と制限事項
先行利用には注意点もあります。
ベータ版は不安定な場合があり、バッテリー消費が激しくなったり、一部のアプリが正常に動作しなくなったりする可能性があります。重要な用途に使用しているデバイスへのインストールは避けましょう。
また、ベータ版では一部の機能が制限されていることがあります。例えば、画像生成の品質が低かったり、生成回数に制限があったりする場合があります。
さらに、ベータ版からの正式版へのアップグレード時にデータが失われる可能性もあります。重要なデータは定期的にバックアップを取ることをお勧めします。
まとめ
Apple Intelligenceは、文章作成や画像生成、情報整理など多彩な機能を持つAppleのAIシステムです。プライバシーを重視した設計で、多くの処理がデバイス内で完結するのが特徴です。iOS 18.4から日本語対応が始まり、基本的な機能は日本語でも利用可能になりました。対応デバイスはiPhone 15 Pro以降やM1チップ搭載のiPad、Macに限られますが、今後のアップデートで機能拡充が期待されています。日常のタスクを効率化したい方は、ぜひApple Intelligenceを活用してみてください。
